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2008年7月30日 (水)

【民法】 平成20年旧司法試験 第1問小問2 参考解答例?

 


※ 文意がとりにくい不適切な記述が一部ございましたので、加筆・訂正致しましたm(v_v)m。


 


 


"http://etc-etc-etc.cocolog-nifty.com/blog/2008/07/20_11af.html">前回に引き続き
今年度の旧司法試験・民法第1問・小問2の参考回答例を作成してみました。


 


そして、前回も申し上げましたが、浅学非才の私が作成した参考回答例ですので、 "#0000FF">どこに間違いや矛盾が潜んでいるか分かりません
(間違いや矛盾にお気づきになられた方は、こっそり教えて下さい(笑))。


 


また、あくまで「参考」のための資料ですので、過剰な論証・記述がしてあります
実際の答案でこのような長々とした論証・記述をする必要はございません。


 


更に、「答案」としての形式をとっていますので、複数の見解や構成が存在する場合でも、1つの見解・構成に立脚した記述をしています。
当然のことではありますが、他の見解や構成に基づく答案は存在しますし、
そちらの方が拙稿よりも遥かに説得力を持っている可能性は高いです(^^;)。


 


どうぞ、これらの点を踏まえられた上で、ご覧くださいませ。
拙稿が学生の方や受験生の方々のお役にわずかなりとも立てば大変光栄に存じます。


 


 


 


"FONT-SIZE: 1.2em; COLOR: #0000ff">■問題


Aは,工作機械(以下「本件機械」という。)をBに代金3000万円で売却して,引き渡した。この契約において,
代金は後日支払われることとされていた。本件機械の引渡しを受けたBは,Cに対して,本件機械を期間1年,賃料月額100万円で賃貸し,
引き渡した。この事案について,以下の問いに答えよ。


 


小問1


その後,Bが代金を支払わないので,Aは,債務不履行を理由にBとの契約を解除した。この場合における,
AC間の法律関係について論ぜよ。


 


小問2


AがBとの契約を解除する前に,Bは,Cに対する契約当初から1年分の賃料債権をDに譲渡し,BはCに対し,
確定日付ある証書によってその旨を通知していた。この場合において,AがBとの契約を解除したときの,AC間,
CD間の各法律関係について論ぜよ。


 


 


 


"FONT-SIZE: 1.2em; COLOR: #0000ff">■解答例


"FONT-SIZE: 1.2em">第2小問2について


1. 本件では、AC間の法律関係、およびCD間の法律関係が問われている。以下では、論述の便宜上、 "#0000FF">(1)AのCに対する所有権に基づく物権的返還請求権、(2)DのCに対する賃料債権、(3)
AのCに対する不当利得返還請求権
の順に論じる。


 


 


2.AのCに対する所有権に基づく物権的返還請求権について

本件Aは、AB間の契約解除後に、Cに対して本件機械の所有権に基づく物権的返還請求権を行使するものと考えられる。


そして、小問1で述べたように、Cは「第三者」(545条1項ただし書)に当たらない。また、他の抗弁は認められない。


よって、AのCに対する所有権に基づく物権的返還請求権は認められる。


 


 


3.DのCに対する賃料債権について

本件Dは、Bから、Cに対する本件機械に関する賃料債権1年分を譲り受けている。したがって、
DはCに対して当該賃料債権の弁済を請求するものと考えられる。


そして、譲り受けた賃料債権の弁済を請求するためには、(1)
当該賃料債権が発生していること、(2)当該賃料債権を譲り受けていること、(3)抗弁の対抗を受けないこと(468条参照)、
が必要である。


では、本件Dは、上記の2つの要件を充足し、Cに対して賃料債権の弁済を請求することができるのか。以下、検討する。


 


 


4.要件(1):債権の発生について

本件Dは、BからCに対する本件機械に関する賃料債権1年分を譲り受けている。しかし、
本件では譲渡時に賃料債権が全て発生していたか否かが明らかではない。そこで、以下、場合分けして論じる。


 


(1)譲渡時において、
契約当初から1年が既に経過していた場合(既発生の賃料債権のみが譲渡された場合)


この場合、Cは1年間、本件機械を「使用及び収益」(601条)している以上、 DがBから譲り受けた賃料債権は全て発生していると言える。


 


よって、この場合は要件(1):債権の発生を満たす。


 


(2)譲渡時において、契約当初から1年が経過していない場合
(将来債権を含めて譲渡された場合)


この場合、DがBから譲り受けた債権の中にはCの「使用及び収益」が認められず、未だ発生していないものが含まれる。


 


そして、 前述のように本件では、Aが、
AB間の契約解除後にCに対して所有権に基づく物権的返還請求権を行使し、 それが認められるものと考えられる。そのため、本件では、
AがCに対して物権的返還請求権を行使した時点でBC間の賃貸借契約は履行不能となる。この結果、継続的契約という賃貸借契約の特殊性から、
同時点でBC間の賃貸借契約は終了すると考えられる。


 


したがって、
AがCに対して物権的返還請求権を行使した時点以後の賃料債権は発生していない。


 


よって、この場合は、
契約当初からAがCに対して物権的返還請求権を行使するまでの間の賃料債権のみ、要件(1): 債権の発生を満たす。


 


 


5.要件(2):債権の譲受けについて


(1)集合債権譲渡の当否

本件Dは、BからCに対する本件機械に関する賃料債権1年分を譲り受けている。


では、このようなBD間の集合債権譲渡は許され、要件(2):
債権の譲受けを満たすのか。 本件では集合債権譲渡の時期が不明なので、以下、場合分けして論じる。


 


(2)譲渡時において、
契約当初から1年が既に経過していた場合(既発生の賃料債権のみが譲渡された場合)


ア. この場合、本件BはDに対して単なる集合債権譲渡を行っている。


 


では、このBD間の集合債権譲渡は許されるのか。集合債権譲渡の可否について、
明文が無いために問題となる。


 


イ. そもそも、集合債権譲渡自体は単なる債権譲渡の集合体に過ぎない。
したがって、 当該集合債権譲渡が譲受人の抜駆的債権回収に該当するなどといった公序良俗(90条)に抵触する場合でなければ、
集合債権譲渡は許されると考えられる。


 


ウ. 本件では、Bの債務不履行の理由は明らかでないものの、
Dが他の債権者から抜け駆けて脱法的に自己の債権を回収したという事情は認められない。


 


よって、BD間の集合債権譲渡は許され、要件(2):
債権の譲受けを満たすと考えられる。


 


(3)譲渡時において、契約当初から1年が経過していない場合
(将来債権を含めて譲渡された場合)


ア. この場合、本件BはDに対して将来債権を含めた集合債権譲渡を為している。


では、この将来債権を含めた集合債権譲渡は許されるのか。
将来債権譲渡の可否について、明文が無いために問題となる。


 


イ. 確かに、
将来債権譲渡契約は未だ発生していない債権を対象とするものであり、不安定な権利を目的とする契約である。 そのため、
対象たる債権の発生可能性が十分に無い契約は契約の有効性を欠き、無効になるとも思える。


 


しかし、
契約の当事者が債権不発生のリスクを踏まえた上で敢えて契約を締結したのであれば、
当該将来債権を含む債権譲渡を無効と解する必要性は原則として無い。


 


なぜならば、
契約不発生のリスクは当事者間の契約責任の追及によって清算することができるからである。もっとも、
当該債権譲渡が抜駆的債権回収に該当するなどといった公序良俗に抵触する場合には、例外的に当該将来債権譲渡は許されないと考えられる。


 


ウ. 本件では、
BD間で適法にリスク配分をした上で将来債権を含む集合債権譲渡が行われたものと考えられる。また、本件では、
Bが有するCに対する賃料債権のうち、1年分(合計1200万円)という比較的短期間、 かつ多大でない金銭債権がDに譲られたに過ぎない。
したがって、Dが、Cに対する債権を抜駆的に回収したという事情は認められず、 公序良俗違反は無いと考えられる。


 


よって、BD間の集合債権譲渡は許され、要件(2):
債権の譲受けを満たすと考えられる。


 


(4)要件(2):
債権の譲受け充足の有無


上記検討の結果、本件賃料債権は集合的にBからDへと譲渡されている。また、
当該集合債権譲渡はAB間の売買契約解除による影響を受けない。


よって、本件Dは要件(2):債権の譲受けを満たす。


 


 


6.要件(3):抗弁の対抗を受けないについて


(1)
「通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由」の意義


ア. 上記のようにBD間の債権譲渡が有効であるとしても、本件では債権譲渡後にAB間の売買契約が解除された結果、
本件機械の所有権はAに遡及的に帰属しており、本件機械の財貨としての効用はAに帰属するものとも考えられる。


 


そして、本件Cは、小問1で述べたように、AB間の売買契約解除の影響を受け、
Aからの不当利得返還請求権を行使され得る地位にある。


 


したがって、本件では、AB間の売買契約解除の効果がCに及んでいる結果、
Cに対して本件機械の(実質的)使用料を請求しうる者がAとDの2人存在することになる。


そのため、Cは、Dの賃料支払請求に対して、
AB間の売買契約解除に基づく二重弁済の危険を理由として支払拒絶の抗弁(559条、576条、601条)を主張するものと考えられる。


 


では、Cは、この解除に基づく支払拒絶の抗弁を
「通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由」(468条2項)としてDに主張することができるか。
「通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由」の意義が問題となる。


 


イ. そもそも、468条2項の趣旨は、
通知という譲渡人の一方的行為によって債務者が害されることを防止する点にある。とすれば、「通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由」
とは、「通知を受けるまでに抗弁発生の基礎が存在していた事由」を意味すると考えられる。


 


なぜならば、抗弁が具体的に発生していなければ
「通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由」として認められないとすると、
譲渡人が一方的に左右できる通知時点によって債務者の防御手段の有無が決まってしまうことになり、468条2項の趣旨に反するからである。


 


ウ. 本件では、本件機械の代金3000万円が後日支払いとなっており、かつ、
その代金未払いがAB間の解除原因となっているものと考えられる。とすれば、CがBから債権譲渡の通知を受けた時点で既にAB間の契約解除
(および解除に伴う賃料債権の実質的譲渡)を生じるに至るべき原因が存在していたと言える。したがって、Cの支払拒絶の抗弁は、
「通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由」に当たる。


 


よって、Cは、解除に基づく支払拒絶の抗弁は
「通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由」(468条2項)であるとしてDに主張することができる


 


(2)Dの「第三者」該当性

ア. しかし、たとえCがAB間の売買契約解除に基づく本件賃料債権のAへの実質的帰属をDに主張し得るとしても、
本件Dは解除前に債権をBから譲り受けている。


そのため、Dは「第三者」(545条1項ただし書)に当たり、Cは、
Dに対しては解除による本件賃料債権のAへ実質的帰属、および、それに伴う二重弁済の危険を主張できないのではないか。「第三者」
の意義が問題となる。


 


イ.  "http://etc-etc-etc.cocolog-nifty.com/blog/2008/07/20_11af.html">小問1で述べたように
「第三者」とは、解除にされた契約の効果について解除前に新たに利害関係を有するに至った者で、権利保護要件を備えた者を言う。


 


ウ.本件では、Dは、
Bから本件機械についての賃料債権をAB間の契約解除前に譲り受けている。そして、この賃料債権は、
本件機械の所有権が本件売買契約によってAからBに移転していなければ他人物賃貸借契約に基づく債権となってしまう可能性がある。
したがって、本件Dは、AB間の売買契約が解除されてしまうと、自己が譲り受けた賃料債権が他人物賃貸借に基づくものになってしまい、
担保責任(559条、560条、601条)の影響を受ける危険性があるという点で、
解除された契約の効果について解除前に新たに利害関係を有するに至った者と言える。


 


また、本件では、
債権譲渡人であるBがCに対して確定日付ある証書によって通知をしているので、債権譲渡についての債務者対抗要件(467条1項)、
および第三者対抗要件を備えたと言える(467条2項)。したがって、Dは、民法上自己の債権譲受行為を保護される地位に立っており、
債権譲受人として為すべきことをBを通じて為したと評価できるので、権利保護要件を備えていると言える。


 


したがって、本件Dは「第三者」に当たり、
AB間の売買契約解除によってその利益を害されることはない。


 


よって、Cは、Dに対しては解除による本件賃料債権のAへ実質的帰属、および、
それに伴う二重弁済の危険を主張できないので、要件(3):抗弁の対抗を受けない、を満たす。


 


 


7.以上より、本件Dは、要件(1):債権の発生、要件(2):債権の譲受け、要件(3):抗弁の対抗を受けない、
をそれぞれ満たすので、Cに対して既に発生している賃料債権の弁済を請求することができる。


 


 


8.AのCに対する不当利得返還請求権について

上記のように、Dは、Aの解除による影響を受けない「第三者」(545条1項ただし書)である。


 


したがって、Aは、Dとの関係ではAB間の売買契約解除を主張することができない。そのため、Aは、自己が本件機械の所有権者であり、
本件において発生している機械の賃料分の財貨の帰属主体であるとDに主張することはできず、賃料分の財貨はDに帰属すべきものと評価される。


 


よって、Aは、Cの本件機械の使用によって「損失」(703条)を受けたとは言えないので、
AのCに対する不当利得返還請求権は認められない。

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