学問・資格

2008年7月30日 (水)

【民法】 平成20年旧司法試験 第1問小問2 参考解答例?

 

※ 文意がとりにくい不適切な記述が一部ございましたので、加筆・訂正致しましたm(v_v)m。

 

 

前回に引き続き、 今年度の旧司法試験・民法第1問・小問2の参考回答例を作成してみました。

 

そして、前回も申し上げましたが、浅学非才の私が作成した参考回答例ですので、どこに間違いや矛盾が潜んでいるか分かりません (間違いや矛盾にお気づきになられた方は、こっそり教えて下さい(笑))。

 

また、あくまで「参考」のための資料ですので、過剰な論証・記述がしてあります。 実際の答案でこのような長々とした論証・記述をする必要はございません。

 

更に、「答案」としての形式をとっていますので、複数の見解や構成が存在する場合でも、1つの見解・構成に立脚した記述をしています。 当然のことではありますが、他の見解や構成に基づく答案は存在しますし、 そちらの方が拙稿よりも遥かに説得力を持っている可能性は高いです(^^;)。

 

どうぞ、これらの点を踏まえられた上で、ご覧くださいませ。 拙稿が学生の方や受験生の方々のお役にわずかなりとも立てば大変光栄に存じます。

 

 

 

■問題

Aは,工作機械(以下「本件機械」という。)をBに代金3000万円で売却して,引き渡した。この契約において, 代金は後日支払われることとされていた。本件機械の引渡しを受けたBは,Cに対して,本件機械を期間1年,賃料月額100万円で賃貸し, 引き渡した。この事案について,以下の問いに答えよ。

 

小問1

その後,Bが代金を支払わないので,Aは,債務不履行を理由にBとの契約を解除した。この場合における, AC間の法律関係について論ぜよ。

 

小問2

AがBとの契約を解除する前に,Bは,Cに対する契約当初から1年分の賃料債権をDに譲渡し,BはCに対し, 確定日付ある証書によってその旨を通知していた。この場合において,AがBとの契約を解除したときの,AC間, CD間の各法律関係について論ぜよ。

 

 

 

■解答例

第2小問2について

1. 本件では、AC間の法律関係、およびCD間の法律関係が問われている。以下では、論述の便宜上、(1)AのCに対する所有権に基づく物権的返還請求権、(2)DのCに対する賃料債権、(3) AのCに対する不当利得返還請求権の順に論じる。

 

 

2.AのCに対する所有権に基づく物権的返還請求権について
本件Aは、AB間の契約解除後に、Cに対して本件機械の所有権に基づく物権的返還請求権を行使するものと考えられる。

そして、小問1で述べたように、Cは「第三者」(545条1項ただし書)に当たらない。また、他の抗弁は認められない。

よって、AのCに対する所有権に基づく物権的返還請求権は認められる。

 

 

3.DのCに対する賃料債権について
本件Dは、Bから、Cに対する本件機械に関する賃料債権1年分を譲り受けている。したがって、 DはCに対して当該賃料債権の弁済を請求するものと考えられる。

そして、譲り受けた賃料債権の弁済を請求するためには、(1) 当該賃料債権が発生していること、(2)当該賃料債権を譲り受けていること、(3)抗弁の対抗を受けないこと(468条参照)、 が必要である。

では、本件Dは、上記の2つの要件を充足し、Cに対して賃料債権の弁済を請求することができるのか。以下、検討する。

 

 

4.要件(1):債権の発生について
本件Dは、BからCに対する本件機械に関する賃料債権1年分を譲り受けている。しかし、 本件では譲渡時に賃料債権が全て発生していたか否かが明らかではない。そこで、以下、場合分けして論じる。

 

(1)譲渡時において、 契約当初から1年が既に経過していた場合(既発生の賃料債権のみが譲渡された場合)
この場合、Cは1年間、本件機械を「使用及び収益」(601条)している以上、 DがBから譲り受けた賃料債権は全て発生していると言える。

 

よって、この場合は要件(1):債権の発生を満たす。

 

(2)譲渡時において、契約当初から1年が経過していない場合 (将来債権を含めて譲渡された場合)
この場合、DがBから譲り受けた債権の中にはCの「使用及び収益」が認められず、未だ発生していないものが含まれる。

 

そして、 前述のように本件では、Aが、 AB間の契約解除後にCに対して所有権に基づく物権的返還請求権を行使し、 それが認められるものと考えられる。そのため、本件では、 AがCに対して物権的返還請求権を行使した時点でBC間の賃貸借契約は履行不能となる。この結果、継続的契約という賃貸借契約の特殊性から、 同時点でBC間の賃貸借契約は終了すると考えられる。

 

したがって、 AがCに対して物権的返還請求権を行使した時点以後の賃料債権は発生していない。

 

よって、この場合は、 契約当初からAがCに対して物権的返還請求権を行使するまでの間の賃料債権のみ、要件(1): 債権の発生を満たす。

 

 

5.要件(2):債権の譲受けについて

(1)集合債権譲渡の当否
本件Dは、BからCに対する本件機械に関する賃料債権1年分を譲り受けている。

では、このようなBD間の集合債権譲渡は許され、要件(2): 債権の譲受けを満たすのか。 本件では集合債権譲渡の時期が不明なので、以下、場合分けして論じる。

 

(2)譲渡時において、 契約当初から1年が既に経過していた場合(既発生の賃料債権のみが譲渡された場合)

ア. この場合、本件BはDに対して単なる集合債権譲渡を行っている。

 

では、このBD間の集合債権譲渡は許されるのか。集合債権譲渡の可否について、 明文が無いために問題となる。

 

イ. そもそも、集合債権譲渡自体は単なる債権譲渡の集合体に過ぎない。 したがって、 当該集合債権譲渡が譲受人の抜駆的債権回収に該当するなどといった公序良俗(90条)に抵触する場合でなければ、 集合債権譲渡は許されると考えられる。

 

ウ. 本件では、Bの債務不履行の理由は明らかでないものの、 Dが他の債権者から抜け駆けて脱法的に自己の債権を回収したという事情は認められない。

 

よって、BD間の集合債権譲渡は許され、要件(2): 債権の譲受けを満たすと考えられる。

 

(3)譲渡時において、契約当初から1年が経過していない場合 (将来債権を含めて譲渡された場合)

ア. この場合、本件BはDに対して将来債権を含めた集合債権譲渡を為している。

では、この将来債権を含めた集合債権譲渡は許されるのか。 将来債権譲渡の可否について、明文が無いために問題となる。

 

イ. 確かに、 将来債権譲渡契約は未だ発生していない債権を対象とするものであり、不安定な権利を目的とする契約である。 そのため、 対象たる債権の発生可能性が十分に無い契約は契約の有効性を欠き、無効になるとも思える。

 

しかし、 契約の当事者が債権不発生のリスクを踏まえた上で敢えて契約を締結したのであれば、 当該将来債権を含む債権譲渡を無効と解する必要性は原則として無い。

 

なぜならば、 契約不発生のリスクは当事者間の契約責任の追及によって清算することができるからである。もっとも、 当該債権譲渡が抜駆的債権回収に該当するなどといった公序良俗に抵触する場合には、例外的に当該将来債権譲渡は許されないと考えられる。

 

ウ. 本件では、 BD間で適法にリスク配分をした上で将来債権を含む集合債権譲渡が行われたものと考えられる。また、本件では、 Bが有するCに対する賃料債権のうち、1年分(合計1200万円)という比較的短期間、 かつ多大でない金銭債権がDに譲られたに過ぎない。 したがって、Dが、Cに対する債権を抜駆的に回収したという事情は認められず、 公序良俗違反は無いと考えられる。

 

よって、BD間の集合債権譲渡は許され、要件(2): 債権の譲受けを満たすと考えられる。

 

(4)要件(2): 債権の譲受け充足の有無

上記検討の結果、本件賃料債権は集合的にBからDへと譲渡されている。また、 当該集合債権譲渡はAB間の売買契約解除による影響を受けない。

よって、本件Dは要件(2):債権の譲受けを満たす。

 

 

6.要件(3):抗弁の対抗を受けないについて

(1) 「通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由」の意義
ア. 上記のようにBD間の債権譲渡が有効であるとしても、本件では債権譲渡後にAB間の売買契約が解除された結果、 本件機械の所有権はAに遡及的に帰属しており、本件機械の財貨としての効用はAに帰属するものとも考えられる。

 

そして、本件Cは、小問1で述べたように、AB間の売買契約解除の影響を受け、 Aからの不当利得返還請求権を行使され得る地位にある。

 

したがって、本件では、AB間の売買契約解除の効果がCに及んでいる結果、 Cに対して本件機械の(実質的)使用料を請求しうる者がAとDの2人存在することになる。

そのため、Cは、Dの賃料支払請求に対して、 AB間の売買契約解除に基づく二重弁済の危険を理由として支払拒絶の抗弁(559条、576条、601条)を主張するものと考えられる。

 

では、Cは、この解除に基づく支払拒絶の抗弁を 「通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由」(468条2項)としてDに主張することができるか。 「通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由」の意義が問題となる。

 

イ. そもそも、468条2項の趣旨は、 通知という譲渡人の一方的行為によって債務者が害されることを防止する点にある。とすれば、「通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由」 とは、「通知を受けるまでに抗弁発生の基礎が存在していた事由」を意味すると考えられる。

 

なぜならば、抗弁が具体的に発生していなければ 「通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由」として認められないとすると、 譲渡人が一方的に左右できる通知時点によって債務者の防御手段の有無が決まってしまうことになり、468条2項の趣旨に反するからである。

 

ウ. 本件では、本件機械の代金3000万円が後日支払いとなっており、かつ、 その代金未払いがAB間の解除原因となっているものと考えられる。とすれば、CがBから債権譲渡の通知を受けた時点で既にAB間の契約解除 (および解除に伴う賃料債権の実質的譲渡)を生じるに至るべき原因が存在していたと言える。したがって、Cの支払拒絶の抗弁は、 「通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由」に当たる。

 

よって、Cは、解除に基づく支払拒絶の抗弁は 「通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由」(468条2項)であるとしてDに主張することができる

 

(2)Dの「第三者」該当性
ア. しかし、たとえCがAB間の売買契約解除に基づく本件賃料債権のAへの実質的帰属をDに主張し得るとしても、 本件Dは解除前に債権をBから譲り受けている。

そのため、Dは「第三者」(545条1項ただし書)に当たり、Cは、 Dに対しては解除による本件賃料債権のAへ実質的帰属、および、それに伴う二重弁済の危険を主張できないのではないか。「第三者」 の意義が問題となる。

 

イ. 小問1で述べたように、 「第三者」とは、解除にされた契約の効果について解除前に新たに利害関係を有するに至った者で、権利保護要件を備えた者を言う。

 

ウ.本件では、Dは、 Bから本件機械についての賃料債権をAB間の契約解除前に譲り受けている。そして、この賃料債権は、 本件機械の所有権が本件売買契約によってAからBに移転していなければ他人物賃貸借契約に基づく債権となってしまう可能性がある。 したがって、本件Dは、AB間の売買契約が解除されてしまうと、自己が譲り受けた賃料債権が他人物賃貸借に基づくものになってしまい、 担保責任(559条、560条、601条)の影響を受ける危険性があるという点で、 解除された契約の効果について解除前に新たに利害関係を有するに至った者と言える。

 

また、本件では、 債権譲渡人であるBがCに対して確定日付ある証書によって通知をしているので、債権譲渡についての債務者対抗要件(467条1項)、 および第三者対抗要件を備えたと言える(467条2項)。したがって、Dは、民法上自己の債権譲受行為を保護される地位に立っており、 債権譲受人として為すべきことをBを通じて為したと評価できるので、権利保護要件を備えていると言える。

 

したがって、本件Dは「第三者」に当たり、 AB間の売買契約解除によってその利益を害されることはない。

 

よって、Cは、Dに対しては解除による本件賃料債権のAへ実質的帰属、および、 それに伴う二重弁済の危険を主張できないので、要件(3):抗弁の対抗を受けない、を満たす。

 

 

7.以上より、本件Dは、要件(1):債権の発生、要件(2):債権の譲受け、要件(3):抗弁の対抗を受けない、 をそれぞれ満たすので、Cに対して既に発生している賃料債権の弁済を請求することができる。

 

 

8.AのCに対する不当利得返還請求権について
上記のように、Dは、Aの解除による影響を受けない「第三者」(545条1項ただし書)である。

 

したがって、Aは、Dとの関係ではAB間の売買契約解除を主張することができない。そのため、Aは、自己が本件機械の所有権者であり、 本件において発生している機械の賃料分の財貨の帰属主体であるとDに主張することはできず、賃料分の財貨はDに帰属すべきものと評価される。

 

よって、Aは、Cの本件機械の使用によって「損失」(703条)を受けたとは言えないので、 AのCに対する不当利得返還請求権は認められない。

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2008年7月27日 (日)

【民法】 平成20年旧司法試験 第1問小問1 参考解答例?

 

※ 文意がとりにくい不適切な記述が一部ございましたので、加筆・訂正致しましたm(v_v)m。

 

今年の旧司法試験の民法第1問・小問1の参考解答例を作成してみました(長くなりすぎましたので、小問2は別稿で掲載させて頂きます)。

 

とは言え、あくまで「参考」に過ぎないものですし、完璧な答案であるとは到底言えません。

 

そもそも、本当に学生の方や受験生の方の参考になるかも疑わしいものです。間違いがどこに潜んでいるか分かりません。その点を踏まえられた上でご笑覧下されば幸いに存じます。

 

尚、以下の解答例では、参考のために過剰な論証がしてあります。したがいまして、実際の答案でこのような長々とした論証をする必要はございません。

 

司法試験をはじめとする各種試験で必要なことは、自分が知ってることを書き出すことではなく、問題解決に必要十分な記述を展開することです。その観点から致しますと、下記解答例は大変低い評価になるものと考えられます(笑)。

 

 

 

■問題

Aは,工作機械(以下「本件機械」という。)をBに代金3000万円で売却して,引き渡した。この契約において,代金は後日支払われることとされていた。本件機械の引渡しを受けたBは,Cに対して,本件機械を期間1年,賃料月額100万円で賃貸し,引き渡した。この事案について,以下の問いに答えよ。

 

1  その後,Bが代金を支払わないので,Aは,債務不履行を理由にBとの契約を解除した。この場合における,AC間の法律関係について論ぜよ。

(小問2は省略)

 

 

 

■解答例

第1 小問1について

1.AのCに対する請求

本件Aは、AB間の売買契約を解除して、同契約からの解放を望んでいる。とすれば、AはAB間の売買契約が無かったならば存在するはずの状態への復帰を望んでいるものと考えられる。

 

したがって、Aは、Cに対して、本件機械についての所有権に基づく物権的返還請求権(明文なし。但し、202条「本件の訴え」参照)、および、本件機械の利用料金についての不当利得返還請求権(703条)を行使するものと考えられる。

以下、それぞれ、検討する。

 

 

2.AのCに対する所有権に基づく物権的返還請求権について

AがCに対して所有権に基づく物権的返還請求権を行使するための要件は、(1)Aが本件機械の所有権を有していること、(2)Cが本件機械を占有していること、である。

そして、本件ではCが本件機械を占有している。したがって、(2)の要件を満たす。

 

(1)Aが本件機械を所有しているかについて
では、Aは、(1)の要件を満たすか。

 

ア.売買契約における所有権移転時期について
(ア) 本件Aは代金後日払いの特約の下で本件機械をBに売却しているものの、BC間の賃貸借契約成立後、AB間の契約を解除(545条)している。では、そもそも、Aは代金後日払い特約が付された本件売買契約で本件機械の所有権を失っているのか。売買契約における所有権移転時期が、不明確であるために問題となる。

 

(イ) この問題について、176条は「当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる」としている。とすれば、文理上、売買契約における所有権移転時期は原則として当事者の意思によって契約の効力が生じた時点、即ち、契約の成立時であると考えられる。また、このように解しても、特約という形の意思表示による修正の余地がある以上、問題は無いと考えられる。

 

(ウ) 本件では、代金こそ後日支払いをする旨の特約があるものの、所有権移転時期に関する特約は無い。したがって、所有権移転時期は、原則どおり契約成立時であると考えられる。よって、Aは、本件売買契約で本件機械の所有権を失っている。

 

イ.解除の効果について
(ア) 本件Aは、BC間の賃貸借契約成立後、AB間の売買契約を解除している。では、Aは、本件解除によってAB間の売買契約が遡及的に無効になり、本件機械の所有権を遡求的に取得したと言えるか。解除の効力について明文が無いために問題となる。

 

(イ) 620条は賃貸借契約の解除について、特に将来効である旨を示している。とすれば、同条の反対解釈として、解除は一般的に遡及するものと民法は予定している考えられる。したがって、契約が解除されると、同契約は遡及的に無効になると考えられる。

 

(ウ) 本件では、AB間の売買契約が解除されているので、Aは、AB間においては、遡及的に本件機械の所有権を取得したと言える。

 

ウ.Aが所有権をCに主張できるかについて
(ア) 本件では、AB間の売買契約解除前に、Bが本件機械をCに賃貸している。では、Cは「第三者」(545条1項ただし書き)に当たり、AはCに解除に基づく遡及的所有権取得を主張することはできないのではないか。「第三者」の意義が不明確であるために問題となる。

 

(イ) 上記のように解除の遡及効を認める私の立場からすれば、本条の趣旨は、解除に基づく遡及効によって第三者の利益が害されることを防止する点にあると考えられる。とすれば、「第三者」とは、解除にされた契約の効果について解除前に新たに利害関係を有するに至った者を言うと考えられる。もっとも、解除権者には取消権者と異なり帰責性が認められないので、解除権者保護の見地から、「第三者」と言うためには、権利保護要件の具備が必要であると解する。

 

(ウ) 本件Cは、AB間の売買契約解除前に、BC間で賃貸借契約を締結している。したがって、解除前に本件機械について賃借権という利害関係を有するに至っていると言える。

しかし、Cは、本件賃貸借契約について権利保護要件を具備していない(現行民法は動産賃貸借契約の権利保護要件を用意していない)。したがって、Cは「第三者」に当たらないので、Aは、Cに解除に基づく本件機械所有権の遡及的取得を主張することができる。

 

以上より、Aは(1)Aが本件機械の所有権を有していること、という要件を満たす。

 

 

(2)抗弁について

ア.対抗要件の抗弁について
Cは対抗要件の抗弁(178条)を主張して、解除による復帰的物権変動に基づくAの所有権取得を否定することはできない。理由は以下のとおりである。CはAとの関係では遡及的に自己の占有権原を失っている以上、CはAとの関係では無権利者である。したがって、Cは「引渡し」の欠缺を主張するにつき正当な利益を有しておらず、「第三者」に当たらない。

 

イ.留置権の抗弁について
Cは、Aから所有権に基づく物権的返還請求権の行使を告知された時点で、CのBに対する賃借権が履行不能になったとしてBに対する損害賠償請求権(415条)を取得する。そのため、Cは留置権の抗弁(295条以下)を主張するとも考えられる。しかし、同債権と本件建物の間には牽連性が認められないので、留置権は成立しない。

 

 

(3)結論

以上より、AのCに対する本件機械についての所有権に基づく物権的返還請求権は認められる。

 

 

3.不当利得返還請求権について
(1) 本件Aは、Cとの関係において遡及的に所有者たる地位を回復しており、Cが本件機械を使用していた間も所有者であったと評価される。では、Aは、Cが本件機械を不当に使用していたとして不当利得返還請求(703条)をすることができるか。

 

(2)Cが賃料を全てBに支払っていた場合
この場合、Cは「他人の財産……によって利益を受け」たとは言えない。よって、AのCに対する不当利得返還請求をすることはできない。本件機械の使用に関しては、AB間の原状回復義務の履行として処理されるべきである(545条2項参照)。

 

(3)Cが賃料の一部、または全部をBに支払っていない場合
この場合、Cは「法律上の原因」無くして、Aの所有物である本件機械を利用し、その「利益」を享受したと言える。そして、この利用行為によって本件機械の損耗などの「損失」をAに与えたと言え、Cの利益とAの損失の間には因果関係が認められる。よって、Aは、不当利得返還請求をすることができる。

 

つづく

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2008年7月11日 (金)

【法律学の基礎】 法的知識を記憶する場合の4つのポイント

 

今日は、法的知識を記憶する場合のポイントについて、一言。

 

と言っても、私は理系出身の科学者ではございません。

あくまで市販されている書籍の記述を基に、法律学の勉強をする場合の記憶の仕方について、一言申し上げるだけです(^_^;)。

 

関連する拙稿: 【法律学の基礎】 答案の書き方
http://etc-etc-etc.cocolog-nifty.com/blog/2006/06/post_1ef9.html

 

 

 

■01.理解してから記憶する

法律学は膨大な知識を必要とする学問です。

 

条文や制度に始まり、判例、通説、有力説、少数説、特殊概念など様々なことを覚えて初めて現実の紛争に立ち向かっていくことができます。

 

法曹になろうと思うのであれば、このような作業を少なくとも6科目について行う必要があります。

そして、抜群の記憶力を誇るごく一部の方を除いて、この6科目分の量の情報を記憶することは容易ではありません。

 

※ 余談ですが、私の高校時代の先輩にこの例外の方がおられました。全国的に見ても極めて優秀な能力の持ち主で、高校時代のほとんどの授業の黒板記載事項を思い出すことができると仰っていました。案の定、東大3回生のときに1発で司法試験に合格されていました。丙案が存在する以前のお話です。

 

そのため、法律学の先生方は、しばしば「丸暗記するのではなく理解して記憶すべき」と指導されます。

また、我妻先生も、勉強をする際には繰り返しよりも理解に重点を置かれていたようです

 

この「理解して記憶する」という方法の重要性は科学的にも裏付けられているようでして、東大の池谷先生は次のように述べられています。

 

「歳をとって、エピソード記憶が発達してくると、丸暗記よりも、むしろ論理だった記憶能力がよく発達してきます。ものごとをよく理解して、その理屈を覚えるという能力です。当然、勉強方法もそうした方針に変えていく必要があります。この努力を怠ると、もはや効率的な学習はできません。」(池谷裕二『記憶力を強くする』〔講談社、ブルーバックスB-1315、2001年〕190頁。尚、引用文の太字部分は、原典では傍点部分)。

 

エピソード記憶 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%94%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%83%89%E8%A8%98%E6%86%B6

勉強法完全攻略!
http://www.progrise.com/s-memory.html

 

 

この理解して記憶するという作業で重要な部分は、もちろん、理解するという箇所です。

 

ですから、記憶をする際には、ご自分がそこを理解しているかどうかを確認することが重要ではないと思います。

 

ご自分が理解しているかどうかを確認する方法としては、東大の道垣内弘人先生が以前仰っていたことですが、

 

「その記憶事項について何も知らない人(素人)に1から説明できるか」

 

を確認されてみてはどうかと思います。

 

例えば、大学の先生になったつもりで、ご自分の頭の中で仮想授業をしてみてはいかがでしょうか。下らない方法かもしれませんが、個人的には案外有効な方法だと思っております。

 

 

 

■02.使える記憶としてインプットする

法律学の知識をインプットするための方法には様々なものがあります。

授業での先生のお話を記憶する、基本書の記述を記憶する、ゼミでの議論を記憶する……など、色々あります。

 

ですが、それらの情報を実際に用いることができなければ、記憶するという作業の意味は半減してしまいます

 

例えば、基本書を読んで当該論点を理解したとしても、記憶していなければ意味がありません。

 

■01.で述べたことと矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、 理解することと記憶することは次元の違う話です

 

例えば、人は誰しも日常会話において相手の発言の意味を理解しています。

ですが、では、相手の発言内容を常に正確に記憶しているか? と問われれば、そうではないと思います。

 

「私たちの脳は、見た情報、聞いた情報をとりあえずすべて記憶するようにできています。そのため、覚えたつもりのないことでも、同じ情報をもう一度みたとき、聞いたときに、『あ、これ知っている』と分かったり、ふとした拍子にそれを思い出したりする。ところが、意識的に脳に入力されていない情報は、思い出したいときに思い出すことができません。つまり、自分の記憶でありながら、自由に使える記憶にはなっていないのです。」(築山節『脳が冴える15の習慣』〔日本放送出版協会、 2006年〕113頁)。

 

したがいまして、基本書などで情報に接した場合には、 記憶するという作業を意識的に行う必要があります

 

 

そして、その場合の記憶は、「使える」形にしておくべきです。

この記事をご覧になっている方は学生の方が少なくないと思いますが、学生の方に即して言えば、試験で「使える」記憶になっていない記憶は、その有用性を著しく失います。

 

どのような形が、自分にとって「使える」ものかは人それぞれですが、典型的なものとしては、いわゆる論証カードというものがあります。

 

論証カードは、予備校教育の弊害のように言われていますが(それを否定しがたい面も勿論ありますが)、その主たる弊害は、思考を停止して闇雲に記憶に走ってしまうという点にあります。

 

自己の理解を表現しやすい形(=使える形)で記憶するために論証カードを用いることは、効率的な方法の1つだと私は考えています。

 

築山先生も次のように仰っています。

 

「また、会議が終わった後には、内容を自分なりにまとめ、メモ程度にでも書いておくといいでしょう。使える記憶になりやすくなります。」。

 

「レジュメなどを見れば概要は書いてあると言っても、それはあくまで他人の脳の中にある言葉です。他人の知識を自分のものにするには、書いたり話したりして、自分で出力する機会をつくる必要があります。」(以上につき、前掲・築山119頁)。

 

 

 

 

■03.睡眠を挟む

現在の脳科学によれば、睡眠には次のような効能があるそうです。

 

「現在の脳科学の見解によれば、夢は情報を整え、 記憶を強化するために必須な過程であるとされています。記憶は夢を見ることで保存されるのです。つまり、寝ることは、ものごとをしっかり覚えるための大切な行為なのです。」(前掲・池谷212頁。引用太字部分は、原典では傍点部分)。

 

「さまざまな記憶データをニューロンのネットワークに織り込むという作業は睡眠中に行われ、それが睡眠の役割の1つだとも言われている。」(Tom Stafford,Matt Webb『Mind Hacks ――実験で知る脳と心のシステム』〔オライリー・ジャパン、2005年〕346頁

 

そうであれば、この睡眠を学習に利用しない手はありません。

池谷先生は、このことを端的に指摘されています。

 

「一日に六時間まとめて勉強するくらいなら、二時間ずつ三日に分けて勉強したほうが、途中に睡眠が入るため能率的に習得できるということです。」(前掲・池谷213頁)。

 

 

そして、この睡眠による記憶を効率的に利用するためには、睡眠前に必ず行う作業の過程で情報に触れるようにするべきです。

 

例えば、就寝前に歯を磨かれる方であれば、歯を磨く空間の傍に記憶すべき情報を記した紙を貼っておいても良いかもしれません。

同様に、就寝前にお手洗いに行く方であれば、お手洗いのドアに記憶すべき情報を記した紙を貼っておいても良いかもしれません。

 

この場合、貼っておく紙に記しておく情報は、前述のように「使える形」で記しておく必要があります。

 

 

 

■04.覚えているかどうか「身体」で確認する

京大の松岡先生もご指摘されていますが、概念を正確に理解することは法解釈では非常に重要です。

同様に、概念を正確に記憶しておくことも非常に重要です。

 

学生の方の答案を拝見している思うのですが、ある概念の説明が非常に正確に為されている答案と、だいたいは正しいがやや不正確な説明しか為されていない答案とでは印象がかなり異なります。

 

正確に申し上げれば、正確な説明ができている方は答案全体の内容が堅実・的確なものであることが多く、説明がやや不正確な方はやはり答案全体の内容もやや不十分であることが多いように思います。

 

そうであれば、法的知識の記憶は正確に行う必要があります(と言っても、いわゆる論証を一言一句正確に覚えるべきと言っているわけではありません。誤解な無きよう)。

 

この観点からすると、せっかく記憶するのであれば、曖昧な記憶を排除する必要があります。

言い換えれば、「覚えた気」になっていてはいけません

 

そして、多くの人は、文章を読んだだけでは情報を正確に記憶することはできません。

 

築山先生が指摘されているように、必ず、音読したり、書いたりすることによって、自分の脳内の情報を外部に出力し、五官で確認すべきです

 

そして、この確認を元に、脳内の情報を修正し、改善していくことによって、自分の記憶はより正確になっていきます。

 

この方法は、原始的で迂遠な方法かもしれませんが、古人曰く、

 

「急がば回れ」

「学問に王道なし」

 

です。

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2008年6月16日 (月)

【法律学の基礎】 法律の学び方

 

久保先生の記事経由で知ったのですが、大杉先生が法の学び方について大変有益な記事をお書きになられていますので、 紹介させて頂きます。

 

また、久保先生も商法の勉強の仕方をお書きになられていますので、併せて紹介させて頂きます。

 

おおすぎ Blog:法を学ぶ - livedoor Blog(ブログ)
http://blog.livedoor.jp/leonhardt/archives/50585165.html

 

Dai-Kubo Diary: 商法の勉強の仕方、という話。
http://daikubo.tea-nifty.com/daikubo_diary/2005/10/post_590a.html

 

 

尚、勉強の仕方については、下記拙稿で紹介させて頂いております松岡先生の記事にも言及がございます。

 

拙稿: 【法律学の基礎】  答案の書き方
http://etc-etc-etc.cocolog-nifty.com/blog/2006/06/post_1ef9.html

 

 

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2008年5月17日 (土)

【民訴】 主要事実と間接事実の区別方法について

 

今日は、質問を受けましたので、主要事実と間接事実の区別方法について、一言。

 

 

 

■定義

主要事実とは、

 

「権利の発生、変更、消滅という法律効果の判断に直接必要な事実」

 

をいい、

 

間接事実とは、

 

「経験則、論理法則の助けを借りることによって主要事実を推認するのに役立つ事実」

 

をいう(以上につき、高橋宏志『重点講義 民事訴訟法 上』〔有斐閣、2005年〕375頁)。

 

 

 

■説明

この「主要事実か間接事実か」という区別が問題になる論点としては、「当事者から主張のないまま認定された事実の弁論違反の有無」があります。

 

そして、この論点に関する有名な事例としては、

 

最判昭和33年7月8日民集12巻11号1704頁(代理方式による契約締結事実の主張の要否が問題になった事例

最判昭和55年2月7日民集34巻2号123頁(所有権の来歴の主張の要否が問題になった事例

 

などがあります。

 

 

伝統的通説に従えば、これらの事例において認定された事実が主要事実か間接事実かであるかは、弁論主義違反になるかどうかの分かれ目であり、重要なポイントと言えます。

 

そして、この当事者から主張の無いままに認定された事実が主要事用実か間接事実かの区別方法について、高橋先生は次のように述べられています。

 

「当事者からの主張がないまま認定された事実につき、それが主要事実であるか否かを直接考えるよりも、もし、当該事実が当事者から主張されたとした場合、それが抗弁事実にあたるか積極否認事実にあたるかを考える方が混乱を少なくする考察方法だとされている。」(前掲・高橋386頁)。

 

つまり、抗弁事実に当たるのであれば主要事実であり、積極否認の理由事実に当たるのであれば間接事実である、ということになります。

 

この考察方法は以下の理由に基づきます。

 

「否認と抗弁は主張者が証明責任を負うか否かによって区別されるが、したがって理由付き否認の理由部分については主張者は証明責任を負っていない。すなわちそれは相手方が証明責任を負っている事実と両立しない事実、反対形相となる事実である。すでに相手方が証明責任を負っている事実の反対形相であるからこそ、否認者はその事実につき証明責任を負わなくてよいのである」(新堂幸司ほか『演習民事訴訟法2』〔有斐閣、1985年〕92頁〔高橋宏志〕)。

 

つまり、ある事実(例えば、「その時、私は海外にいたから弁済を受け取ってはいない」という事実)が積極否認の理由に当たるのであれば、その否認の反対形相たる事実(「日本にいた」という事実)についての証明責任は否認者の相手方が負っているはずです。

 

そして、伝統的通説に従えば、証明責任は主要事実にしか課されず、かつ、証明責任は当事者の一方にしか課されません。

 

したがいまして、積極否認の理由に当たる事実は、主要事実以外の事実、すなわち間接事実になります(補助事実は度外視しています)。

 

 

 

尚、一応、注意すべきは、当事者の主張は抗弁事実と積極否認事実に二分されるわけではないという点です。

 

例えば、前掲最判昭和33年7月8日に即して申しますと、原告Xが被告Yとの売買契約締結事実を請求原因として代金支払請求をしたとします。

 

そして、これに対して、被告Yが、「私は原告Xとは契約を締結していない。原告Xの代理人であるAと契約を締結した」と主張したとします(こんな主張は机上の空論だと思いますが)。

 

この場合、被告Yの主張する事実は抗弁でも否認でもありません(定義を確認してください)。

Yが主張する事実は、原告の請求を基礎づけているので、請求原因事実に当たります。

 

したがいまして、Yが主張する事実は主要事実に当たります。

……瑣末な注意ですね。本当に(^_^;)。

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2008年5月15日 (木)

【行政法】 要綱に基づく給付行政の争い方について

 

今日は、質問を受けたので、行政処分形式をとっていない(=要綱に基づいた)給付行政の争い方について、ごくごく簡単に一言。

 

 

 

■説明

実際的な争い方(の大筋)についての説明ですので、粗雑な記述で恐縮ですが、大要、以下のような争い方になると思います。

 

第1は、強引に処分性を肯定して抗告訴訟に持ち込むという方法です。

 

 

第2は、公法上の当事者訴訟(実質的当事者訴訟)としての給付訴訟(行訴法4条)を用いるという方法です。

 

つまり、

 

「要綱を作るのは契約の申込み、国民の申請はその承諾ととらえて、契約は申請で成立する」

 

と考えて給付訴訟と構成するという方法です(斎藤浩『行政訴訟の実務と理論』〔三省堂、2007年〕347頁)。

 

この考え方が投影された下級審裁判例としては東京地判平成18年09月12日があります(尚、大阪高判昭和54年7月30日判時948号44頁なども参照)。

 

但し、この考え方は要綱は権利義務関係を発生させないという伝統的な考え方からすれば、やや苦しい面もあります。

 

 

第3は、平等原則を媒介にした争うという方法です。

この方法は、自分と同視できる他者には給付しているにも関わらず自分には給付されていない、という点に立脚したものです。

 

そして、この方法であれば、要綱に基づく給付行政であっても(憲法は公法関係の全てに妥当するので)給付を基礎づけることは可能です。

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2008年5月13日 (火)

【会社法】 定義規定の位置の調べ方?

 

今日は、トリビア的な――というか瑣末な――豆知識を1つ、ご紹介いたします。

 

時々、

 

「会社法の定義規定の位置はどうやって覚えれば良いのか?」

 

という質問を受けることがあります。

新旧司法試験で用いられる六法には参照条文案内が付いておりませんので、この問題は受験生の方にとっては切実かもしれません。

 

この問いに対する答えとしては

 

「重要な定義はその位置を覚えるしかない」

 

としか答えようが無いのですが、これでは身も蓋もありませんね(笑)。

 

ちなみに、お役に立つかどうかは分かりませんが、会社法施行規則2条には施行規則で定義規定の「一部」の位置が紹介されています。

 

ただ、施行規則2条は、

 

(1)施行規則で用いられる用語で

(2)会社法に置かれている定義規定と同一内容の用語について

 

説明しているだけですので、全ての定義規定の位置を網羅しているわけではありません。お気をつけ下さい。

 

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2008年5月12日 (月)

【刑法】 状態犯と継続犯の区別の仕方

 

今日は、状態犯と継続犯の区別の仕方について、簡単に一言。

 

と言っても、重要な記述は(いつもどおり)引用部分にしかありませんが……(>_<)。

 

 

 

■定義

状態犯とは、

 

「構成要件的結果の発生によって法益侵害が発生し犯罪も既遂となる点は、即成犯と共通であるが、その後、行為者の行為によって法益侵害状態が継続するもの」(裁判所職員総合研修所監修『刑法総論講義案(三訂版)』〔司法協会、平成16年〕52頁

 

を言います。典型例は窃盗罪です。

 

 

継続犯とは

 

「構成要件的結果の発生とともに、法益侵害も発生し、犯罪は既遂となるが、その後も犯罪行為を継続している間、終始法益侵害の状態も継続して、犯罪の継続が認められるもの」(前掲・講義案53頁

 

を言います。典型例は監禁罪です。

 

 

 

■説明

状態犯と継続犯の観念的な区別は、グラフで図示すれば、一目了解です(ブログで簡単にグラフを図示できる方法、どなたかご存知ありませんか(^_^;)?)。

 

とは言え、実際の各犯罪が状態犯か継続犯かを区別することは初学者ならずとも、なかなか難しい場合があります。

特に、特別法に定められた犯罪類型の場合は、自分で判断しなければならないことも少なくありません。

 

 

そこで、区別を容易化する思考方法として、次のような見解が主張されています。

 

すなわち、

 

継続しているのが構成要件該当行為なのか(監禁はその継続中、監禁行為そのものが継続しているといえる)、

それとも単に法益侵害の状態が継続しているにすぎないのか(窃盗の場合、構成要件に該当するためには占有の侵害と利用の妨害の両者が必要であるが、行為後は占有の奪取という部分が欠落する以上、構成要件に該当する行為は終わっている)という基準」(西田典之『刑法各論〔第3版〕』〔弘文堂、平成17年〕243頁。太字は引用者

 

です(元々の主張者〔出典〕は林美月子先生のようなのですが、神奈川法学が手元にないため、孫引きに近い状態になっております。申し訳ありません)。

 

 

この基準は非常に明快で、かつ、従来の状態犯・継続犯の定義や実体をうまく説明でき、更には、新規の犯罪の説明も可能ではないかと思います(「学説」のあるべき姿の1つとも言えます)。

 

 

ちなみに、元々の林先生のご論文は林美月子「状態犯と継続犯」『神奈川法学』24巻3=4号1頁以下とのことです。

 

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2008年5月 9日 (金)

【会社法】 賠償責任と弁済責任

 

今日は、会社法上の賠償責任と弁済責任について、一言。些細な知識ですが。

 

 

 

■条文

(役員等の株式会社に対する損害賠償責任) 第423条1項

取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この節において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

 

(役員等の連帯責任) 第430条

役員等が株式会社又は第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合において、他の役員等も当該損害を賠償する責任を負うときは、これらの者は、連帯債務者とする。

 

 

(剰余金の配当等に関する責任) 第462条1項柱書

前条第1項の規定に違反して株式会社が同項各号に掲げる行為をした場合には、

当該行為により金銭等の交付を受けた者 並びに

当該行為に関する職務を行った業務執行者(業務執行取締役(委員会設置会社にあっては、執行役。以下この項において同じ。)その他当該業務執行取締役の行う業務の執行に職務上関与した者として法務省令で定めるものをいう。以下この節において同じ。) 及び

当該行為が次の各号に掲げるものである場合における当該各号に定める者

は、当該株式会社に対し、連帯して、当該金銭等の交付を受けた者が交付を受けた金銭等の帳簿価額に相当する金銭を支払う義務を負う。

 

 

 

■説明

会社法には取締役の責任を定める規定が幾つかありますが、それらで定められている責任の性質は常に同じではありません。

 

即ち、会社法上の取締役の責任には、賠償責任といわゆる弁済責任があり、それらは別物と解されています。

ちなみに、これらの責任の性質は、旧法では主として266条1項の解釈として論じられていました。

 

 

賠償責任とは、いわゆる損害賠償責任のことであり、例えば、会社法423条1項や430条が規定している責任がこの賠償責任です。

 

会社法上の多くの責任はこの損害賠償責任に当たります。

 

 

他方、弁済責任とは、損害を賠償するために課される責任ではなく、出捐を回復するために課される責任のことです(正確な定義を紹介したかったのですが、私の周囲にある――手が届く範囲にある――文献では定義を発見することができませんでした)。

 

弁済責任の典型的な規定としては会社法462条があります。

 

462条は、「損害を賠償する責任」423条1項)という文言ではなく、意図的に「金銭を支払う義務」という文言を用いています。

 

これは462条によって課される責任が賠償責任ではなく、弁済責任であることを示しています。

 

具体的に申しますと、462条の効果として、461条1項違反行為をした取締役や株主などは出捐した額を全額弁済する責任を第一次的に負うことになります。

 

言い換えれば、462条によって取締役が負う責任は、会社が株主に違法に分配された金銭の返還を請求をして回収できなかった場合に――いわば第2次的に――その未回収分について生じる責任ではありません。

 

会社の請求の成否を問わず配当額全額について第1次的に負う責任なのです。

 

 

このように、賠償責任と弁済責任はその性質を異にします。

 

そして、430条が定めているのは賠償責任についての連帯責任であり、同様に462条1項柱書が定めているのは弁済責任についての連帯責任です。

 

したがいまして、ある1つの同じ行為について、賠償責任を負う取締役Aと弁済責任を負うBがいたとしても、会社法上は、当然には取締役Aと取締役Bは連帯債務を負うわけではありません。

 

もし、この取締役Aと取締役Bに連帯債務を負わせるべきと考えるのであれば、会社法上の規定を解釈するか、もしくは一般法たる民法の解釈を施す必要があるのではないか、と思います。

 

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2008年5月 7日 (水)

【刑訴】 逮捕前置主義と逮捕・勾留の一回性などについて

今日は、質問を受けたので、逮捕前置主義と逮捕・勾留の一回性などについて一言。

 

 

 

■質問

逮捕前置主義と事件単位の原則や一罪一逮捕一勾留の関係はどのようになっているのか。

たとえば、被疑者をA罪(ex.窃盗罪)で逮捕してB罪(ex.殺人罪)で勾留したという事案の場合、何をどのように論証すれば良いのか。

 

 

 

■定義

逮捕前置主義とは、

 

「被疑者の勾留には逮捕手続が先行しなければならない」という制度(207条1項)

 

を言います(酒巻匡「身体拘束所分に伴う諸問題」法教291号95頁〔2004年〕)。

 

 

一罪一逮捕一勾留の原則とは、

 

「実体法上一罪とされる事実につき、逮捕・勾留は1回しか許されないとする」原則

 

を言います(長沼範良ほか『演習刑事訴訟法』〔有斐閣、2005年〕85頁〔佐藤隆之〕)。

 

 

事件単位の原則とは、

 

「逮捕・勾留の効力については、逮捕状又は勾留状に記載された被疑事実を基準に考え、その効力は、当該被疑事実のみに限られ、それ以外の犯罪事実には及ばない」という考え方

 

を言います(三浦正晴=北岡克哉『令状請求の実際101問』〔立花書房、平成14年〕106頁)。

 

 

 

■解説

まず、被疑者をA罪(ex.窃盗罪)で逮捕して、別事件のB罪(ex.殺人罪)で勾留したという事案の場合、基本的には、「逮捕前置主義の趣旨が全うされているか」を論証すれば充分です。

 

何故ならば、この場合はA罪の逮捕状とB罪の勾留状がそれぞれ発付されていると考えられるので事件単位の原則は問題にならないからです(下記拙稿参照)。

 

拙稿: 【刑訴】 逮捕前置主義と事件単位原則について
http://etc-etc-etc.cocolog-nifty.com/blog/2007/10/post_9336.html

 

 

次に、事案をやや修正してみます。

 

すなわち、傷害罪で逮捕したが、逮捕中に被害者が死亡したために傷害致死罪で勾留したという事案の場合、何を論証ずへきでしょうか?

 

この事案の場合は、特に論証することはありません。

確かに、逮捕時の罪名と勾留時の罪名は異なります。

 

しかし、この事案で問題になっている「事実」は明らかに同一事実であり、逮捕前置主義の趣旨は当然に全うされているからです。

同様に、被疑者を傷害致死罪で逮捕したところ、逮捕中に殺意の存在が判明したので殺人罪で勾留したという事案の場合も、特に論証する必要はありません。

 

 

問題があるのは、以下のような事例です。

 

たとえば、2008年04月01日に被疑者が単純な窃盗の被疑事実Dで逮捕され、その後、勾留を経て、同年04月20日に釈放されたとします。

ところが、同年05月01日、被疑事実Dと常習一罪の関係(常習窃盗)にある被疑事実C(2008年03月01日の窃盗事実)が発覚しました。

 

この場合は、逮捕前置主義の趣旨を論じた上で、C罪とD罪を"同視"できるか(C罪とD罪は実体法上一罪の関係にあるか)を更に検討する必要があります。

 

何故ならば、実体法上の一罪は訴訟法上の一回的取扱いを原則として要請しているからです。

 

「実体法上の一罪性は、単純一罪以外の関係、とりわけ、常習一罪などの集合犯についても、全体の事実の密接関連性ないし一体性を基準として決せられているとされており、これを手続の観点から見れば、こうした関係に立つ事実について敢えて分割して身柄拘束の根拠とすることを許す場合には捜査の重複を招く可能性が高く、その結果、法定された身柄拘束期間が潜脱されるおそるれが類型的に高い、ということもできよう。したがって、実体法上の一罪関係に立つ事実の範囲は類型的に見て、手続上、原則として一回的に扱うことを要求することが妥当な範囲であると思われる。」(池田公博「逮捕・交流に関する諸原則」法教262号93頁〔2002年〕)。

 

但し、ここで注意すべきは、現在ではC罪とD罪が実体法上一罪であるからと言って、直ちに訴訟法上の一回的取扱いに繋がるわけではないという指摘が有力に為されているということです。

 

「刑事手続が、刑罰権を実現するための手段と位置づけられるとしても、(刑罰権の一個性という)実体法の要請に反しない限りで、訴訟法的な要因(捜査段階であれば、被疑者の負担、捜査の必要、事情変更の経緯、捜査機関の有する人的・物的資源など)を考慮して手続のありようを決定することは否定されないはずだ」(前掲・佐藤86頁)。

 

 

そして、この有力説は次のように主張します。

 

「このように考えると、実体法上一罪を構成する事実を基礎とする(2度目以降の)身柄拘束の可否は、捜査の重複を防ぎ、被害者に無用の負担をかけない、という要請……との関係で、身柄拘束の基礎とされた事実が、同時処理すべき事実の範囲に含まれていたか、という基準によって判断されることとなる。」(前掲・佐藤86頁)。

 

 

したがいまして、このような有力説に立つ場合、上記C罪とD罪は

 

「同時処理の可能性があったとして、新たな逮捕・勾留は認めず、一定の要件のもとに再逮捕・再勾留を認めるに過ぎない」(前掲・三浦=北岡113頁

 

ということになります。

 

 

ちなみに、検察ではこの有力説のようには考えられておらず、

 

「証拠隠滅等のおそれ(を防ぐ ――引用者補足)という現実的な要請に基づく逮捕・勾留の制度本来の趣旨」

 

を重視して、

 

「現実に行われた生の行為の基本的事実関係を同一にしているかどうかで判断する」

 

と考えられています(前掲・三浦=北岡115頁)。


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2008年5月 5日 (月)

【民訴】 訴訟告知の基礎知識

 

今日は、質問を受けましたので、訴訟告知について、ごくごく簡単に一言。

 

 

 

■条文

(訴訟告知) 第53条

1項  当事者は、訴訟の係属中、参加することができる第三者にその訴訟の告知をすることができる。

4項  訴訟告知を受けた者が参加しなかった場合においても、第46条の規定の適用については、参加することができた時に参加したものとみなす。

 

 

 

■定義

訴訟告知とは、

 

「訴訟の継続中、当事者から第三者たる利害関係人に対して、訴訟が継続している旨を法定の方式によって通知すること」

 

をいう(高橋宏志『重点講義 民事訴訟法 下〔補訂版〕』〔有斐閣、2006年〕349頁)。

 

 

 

■説明

最初の質問は、「参加することができる第三者」(53条1項)の範囲はいったいどこまでか?というものでした。

 

結論としては、53条1項の「参加することができる第三者」は、補助参加人(42条)に限られず、独立当事者参加人(47条)や共同訴訟参加人(52条)を含むと解されています。

 

この点について、争いは無いと思われます。

 

 

 

次の質問は、訴訟告知を受ければ被告知者は常に参加的効力に服するのか?という質問でした。

 

これも結論から申し上げれば、多数説は、

 

被告知者が「告知者を保護すべき実体上の地位にある場合」に限って参加的効力が被告知者に及ぶ

 

と考えています(前掲・高橋350頁)。

 

46条の効力を敗訴責任の公平な分担に基づく参加的効力と解する通説の立場からすれば、このような限定が適切ではないかと私も考えます。

 

何故ならば、参加的効力の根拠は信義則にあるところ、被告知者が告知者を保護すべき実体上の地位にある場合には「被告知者が実体関係を熟知しており、告知者に協力することが期待されてしかるべきだから」(前掲・高橋350頁)です。


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2008年5月 2日 (金)

【民訴】 既判力の作用の基礎

 

今日は、以前、質問を受けたので、既判力の作用の仕方について、簡単に一言。

 

ごくごく基本的なことなので、目新しいものは何もありませんが……。

 

 

 

■問題

Aが、Bにガソリンを販売したが、Bが代金を支払わなかったので、Aが売買代金支払請求訴訟を提起した。

ところが、Bは、錯誤無効を主張し、これが認められたため、Aの請求は棄却された。

 

そのため、Aは、上記売買契約の無効を理由としてガソリンの不当利得返還請求をしたところ、Bは上記売買契約の締結の事実を主張し、 「法律上の原因」の存在を主張した。

 

この場合、前訴の判決効は後訴でどのように作用するか?

 

 

 

■定義

既判力とは、「確定判決の判断に与えられる通有性ないし拘束力」 をいう(高橋宏志『重点講義 民事訴訟法 上』〔有斐閣、 2005年〕520頁)。

 

 

 

■説明

結論から言うと、伝統的な考え方に従う限り、上記前訴の既判力は後訴に及びません。

 

何故ならば、

 

「後訴の訴訟物が前訴の訴訟物と同一である場合、後訴の訴訟物が前訴の訴訟物と矛盾対立関係にある場合、 後訴の訴訟物が前訴の訴訟物を先決関係として定まる場合」(前掲・高橋527頁

 

に当たらないからです(上記設例は矛盾対立関係ではないので注意)。

 

 

つまり、既判力論について伝統的な立場で考えるのであれば、まず、同一関係、矛盾対立関係、 先決関係の有無を考える必要があります

 

そして、これらの関係が認められないのであれば、既判力は及ばない、という結論になります。

 

換言すれば、伝統的見解は、上記設例に潜むような問題を既判力で処理すべきではない(=別の箇所で処理すべき)と考えています。

 

学生の方が書かれる答案でも、上記設例の問題を解決するために既判力概念自体を修正するのは”危険”かもしれません (そのような修正を要求する問題は少ないでしょう)。

 

既判力の後訴での作用を考えるに際しては、上記の3つの関係に当たるか否かという点を淡々と、しかし堅実に検討・処理し、 その上で問題解決を図るべきでしょう。

 

 

尚、上記設例の問題点は、信義則や争点効などで処理することになります。

 

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2008年5月 1日 (木)

【刑訴】 おとり捜査の誤解されやすい点について

先日もお伝えしましたが、5月――新旧司法試験の季節――ということで、当ブログの本来のネタである法律系の記事をできるだけお伝えしていきたいと考えております。

 

と言っても、いつ弾切れになるかは分かりません(^_^;)。

 

期待されている方も少ないとは存じますが、どうぞ、期待せずにお待ちくださいませm(__)m。

 

 

という訳で、今日は、以前、質問を受けたことがある、おとり捜査の誤解されがちな点について、一言。

 

 

■定義

おとり捜査とは、

 

「捜査機関又はその依頼を受けた捜査協力者が、その身分や意図を相手方に秘して犯罪を実行するように働きかけ、相手方がこれに応じて犯罪の実行に出たところで現行犯逮捕等により検挙する」捜査方法(最判平成16年7月12日刑集58巻5号333頁)

 

を言います。

 

 

 

■解説

おとり捜査については、刑事訴訟法上に明文が無いために、その適法性が問題となります。

 

具体的には、

 

(1) おとり捜査は強制処分か否か

(2) 任意捜査であるとすればその限界はどこにあるのか

 

が問題になります(他にも197条1項本文は将来発生する犯罪の捜査を許容しているのか、という論点が一応あります)。

 

 

 

■おとり捜査は強制処分か

強制処分の定義については争いがありますが、判例の定式(井上正仁先生の分析)に従えば、

 

(1) 相手方の意思を制圧しているか

(2) 相手方の身体、財産、住居などの重大な権利や利益を侵害しているか

 

がメルクマールになります。

 

そして、おとり捜査には相手方の意思の制圧という要素がありませんので、上記(1)の要件を充たしません。

したがいまして、おとり捜査は、強制処分ではありません。この点については、現在ではほとんど争いがないのではないかと思います。

 

 

尚、注意していただきたいのは、(2)の要件に関連する事項です

 

すなわち、多数説によれば、おとり捜査の主たる問題点――違法性の所在――は、相手方の権利や利益侵害にあるわけではありません(反対は人格的自律権を問題にされる三井誠先生など)。

 

多数説は、おとり捜査の違法性の実質を

 

「国家が犯罪を創り出し、その結果、刑事実体法によって保護される法益(引用者注:国民一般の法益)を侵害する」点

および

「本来犯罪を抑制すべき捜査機関がトリックを用いて犯罪を惹き起こすという矛盾を伴う点」

 

に求めています(以上につき、松尾浩也=井上正仁編『刑事訴訟法判例百選[第7版]』〔佐藤隆之〕27頁)。

 

ですから、この意味でも判例の強制処分の定義には該当しない、ということになります。

 

 

 

■おとり捜査の二分説の言う「犯意」

おとり捜査については、従来、二分説と呼ばれる見解が有力でした(現在では東京高裁の池田修先生などが主唱されている必要性・相当性枠組みの方が有力だと思います)。

 

ここにいう二分説とは、任意処分としてのおとり捜査の限界を画定するための規範として、

 

「もともと犯意のなかった者に積極的に犯意を誘発させて犯罪に導く場合(犯意誘発型)は違法であり、もともと犯意を有していた者につきその犯意を強化しあるいはその現実化の機会を提供したにすぎない場合(機会提供型)は適法だとする」(長沼範良ほか『演習刑事訴訟法』〔有斐閣、2005年〕176頁〔田中開〕

 

見解を言います。

 

そして、よく誤解されがちなのですが、典型的な二分説の場合、ここで言う「犯意」とは単純な犯罪実行の意思を意味するわけではありません

 

修正されたけ見解の場合は別ですが、典型的な二分説の場合、「犯意」とは

 

「事前の犯罪的傾向、犯行の素地」

 

を意味します(前掲・佐藤26頁)。

 

印象付けるために、誤解を恐れず極端に言えば、ここでいう「犯意」とは、犯罪的人格のことです。

 

ですから、いわゆる犯意誘発型のおとり捜査は滅多に存在しません。

これは、捜査機関が文字どおりの「善良な市民」を犯罪者に堕落させるような場合を意味します。

 

この理解を前提にすれば、犯意誘発型のおとり捜査は、たとえ明文があっても許容されません

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2008年4月 7日 (月)

【余談】 春から法学を学ぶ人が読んでも良いかもしれない23冊・その1

 

春、ということで、「2008年度の新社会人が読んでおくべき12冊」 などがブログに限らず、雑誌等でも特集されています。

 

と言うわけで、当ブログでも便乗してみました(^_^;)。

 

題して、「春から法学を学ぶ人が読んでも良いかもしれない23冊」です(但し、あくまで「かもしれない」ですので… …)

 

今回は、「その1」として、憲法・民法の書籍を10冊、ご紹介いたします。

 

尚、法学一般の優れた入門書としては、道垣内正人先生の (後出の道垣内弘人先生のお兄様です) 『自分で考えるちょっと違った法学入門』(有斐閣、第3版、2007年)がお薦めです。

 

 

 


 

 

■憲法

入門書 : 長谷部恭男『憲法と平和を問いなおす』 (筑摩書房、ちくま新書465、 2004年

 

本書は、東京大学教授の長谷部先生が書かれた新書です。

タイトルに「憲法」と「平和」の単語が入っているので、一瞬、思想系の書籍のようにも思えますが(笑)、内容は違います。

 

むしろ、一般論として――つまり日本国憲法に限らず――およそ憲法とはどのようなものか、いかなる機能を果たすものなのかについて、 平易な言葉で説明されています。

 

そして、その上で、憲法で対処できる事項について説明していきます。民主主義で処理可能な事項とそうでない事項とは何か。 公と私とは何か。

この辺りになると長谷部先生のご見解が時折顔を出しますが、初学者でも知っておいて損は無いご見解ですのでご安心を。

 

これを読んだからと言って、学生の方が試験で良い点数がとれるようにはならないと思いますが(笑)、 憲法について地に足のついた議論をしたいのであれば、読んでおくべき本だと思います。

 

類書として、同じく長谷部先生が書かれた『憲法とは何か』岩波書店、岩波新書・新赤版1002、2006年)もあります。

 

 

教科書 : 高橋和之『立憲主義と日本国憲法』 (有斐閣、 2005年